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鉄欠乏性貧血の原因や症状、治療について

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  • 健康診断で貧血を指摘された

  • めまいや倦怠感がいつもある

 

 

 

このような症状はありませんか?

貧血、特に鉄欠乏性貧血が原因かもしれません。

 

鉄欠乏性貧血は若い女性の方を除くと胃がん、大腸がんなど

消化管のがんの可能性が高く原因の検査が必要です。

今回鉄欠乏性貧血の症状や原因、治療について説明します。

 

院長 中谷行宏

私は消化器病専門医、内視鏡専門医として診療をおこなっています。

月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。

 

鉄欠乏性貧血とは

 

 

体内の鉄が不足することで、赤血球に含まれているヘモグロビン

の合成に必要な鉄分が不足することで起こる貧血です。

 

貧血の分類

 

貧血の分類には何種類かありますが、

赤血球の大きさで分ける方法があります。

平均赤血球容積(MCV)が80以下の場合小球性貧血、

80~100が正球性貧血、

100以上が大球性貧血です。

3種類に分けられます。

 

正球性貧血の代表的な疾患は、腎機能障害による貧血や骨髄での貧血です。

大球性貧血の代表的な疾患は、胃がんの術後の貧血や

アルコールの飲み過ぎによる貧血が考えられます。

 

小球性貧血の代表的な疾患は鉄欠乏性貧血です。

すべての貧血の約70%がこの鉄欠乏性貧血とされています。

 

鉄欠乏性貧血の症状

 

 

貧血には様々な症状がありますが、特徴的な症状に絞ってお伝えします。

 

摂食障害:氷を食べたくなります。

脳への酸素供給量の低下や満腹中枢障害、体温調節障害などが原因と考えられています。

 

スプーン爪:爪がそりかえり、割れやすくなります。

 

摂食障害、スプーン爪は比較的鉄欠乏性貧血に特徴的な所見とされています。

 

倦怠感:疲れやすく、だるさが起こりやすくなります。

 

めまい:立ちくらみやふらつきの症状がでやすくなります。

 

無症状:貧血があっても自覚症状がない方は多くおられます。

健康診断などの血液検査で指摘されます。

 

貧血の症状は気づきにくく、鉄欠乏が治って貧血の症状だったとわかることがあります。

さらにゆっくりした貧血は症状がでにくいです。

 

 

貧血とはいえない症状

 

 

  • 電車でたっているときに倒れた。

  • トイレで排便のときに意識を失った

 

 

 

一般的に貧血と言われる症状ですが、医学的には

迷走神経反射という症状です。

 

緊張やストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れることで

脳に血流が足りなくなりでる症状です。

医学的な貧血とは違います。

 

鉄欠乏性貧血の診断基準

 

 

貧血かどうかは血液検査で判断します。

 

Hb値で判断します。日本人ではHb値が男性13.0g/dl,女性12g/dl以下が貧血の基準です。

鉄欠乏性貧血では、血清フェリチン値(貯蔵鉄)が低下します。

フェリチンが低下するのは鉄欠乏性貧血のみなので

フェリチンが低下していれば鉄欠乏性貧血の確定診断となります。

 

 

鉄欠乏性貧血の原因

 

 

鉄欠乏になった原因を突き止めることが最も重要です。

 

①鉄需要の増加(思春期、妊娠)

②鉄供給の低下(鉄の摂取不足、吸収不良)

③鉄喪失(生理、消化管出血、婦人科疾患など)

 

 

日本の通常の食生活をしている状態において、

食事での鉄分の摂取不足というのは通常起こりません。

出血での喪失が最も多い原因です。

 

目に見えて出血がある場合、気づかないような少量ずつの出血の場合どちらもあります。

消化管、婦人科系いずれかが多いです。

 

生理による貧血

 

妊娠可能な女性には貧血がかなり多くみられます。

5人に1人は貧血であり、一般人口と比べると約20倍の頻度です。

貧血になる原因でもっとも多いです。

 

消化管出血のよる貧血

 

男性は消化管出血がもっとも多い貧血の原因です。

 

顕在性の出血つまり、目に見えたる吐血、下血、血便の症状がある場合があります。

 

目に見えない潜在性の出血が原因のこともあります。

潜在性の出血では、大腸がん、胃がん、食道炎、

消化性潰瘍、胃炎、炎症性腸疾患、血管拡張症、小腸腫瘍などが原因の可能性があります。

 

貧血の原因で多いのは胃がん食道がん大腸がん

 

鉄欠乏性貧血は男性ではとくに、消化管がんの可能性が高いです。

 

貧血のある方と貧血のない方を比べると、

上部消化管のがん(胃がん、食道がんなど)が6.3倍見つかっています。

また、鉄欠乏性貧血の方に内視鏡を行ったところ、16%にがんや腫瘍が見つかったと報告されています。

男性、閉経後の女性にはとくに重要です1)。

男性や妊娠期間が終わった女性の鉄欠乏性貧血は2%程度の方にしかみられません。

 

鉄欠乏性貧血の治療

 

 

①原因の治療

大腸がんや潰瘍などがあればその原因に対する治療が必要です。

 

②薬物療法

基本的には鉄剤の飲み薬による治療を行います。

 

鉄剤には吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が10-20%程度の方でることがあります。

通常1-2週間で消化器症状は改善することが多いです。

 

ヘモグロビンは6-8週間で正常化しますが、

貯蔵鉄であるフェリチンはまだ少ない状態です。

 

鉄剤の内服をやめてしまうとすぐに貧血が再発するため、

フェリチンが正常になるまで6ヶ月程度鉄剤の内服をおすすめしています。

 

まとめ

 

鉄欠乏性貧血は若い女性の方は生理での出血が原因であり、

それほど心配することはありません。

それ以外の方は、胃がん、大腸がんなどの消化管のがんの可能性があり、

貧血の原因の検査として内視鏡検査をおすすめします。

 

1)Khadem G, Scott IA, Klein K. Evaluation of iron deficiency anaemia in tertiary hospital settings: room for improvement? Intern Med J 2012; 42:658.

 

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