今回みなさんあまり聞きなれない「赤痢アメーバ」について解説します。
赤痢アメーバなんてきいたことがない、かなりまれな病気と思われるかもしれません。
実は年間報告数1000例を超える、日本で最も症例の多い原虫感染症です。
赤痢アメーバとは
赤痢アメーバ(学名:Entamoeba histolytica)は、腸に感染する寄生虫の一種です。
感染する部位によって大きく2種類に分かれます。
主に腸に感染して症状を起こす腸アメーバ症、
ときに肝臓などの臓器に膿瘍(うみ)をつくることがある腸管外アメーバ症があります。
今回頻度が多い腸アメーバ症に絞って解説します。
衛生環境が悪い場所で感染が広まりやすく、主に発展途上国で多く見られますが、
旅行先で感染することもあります。
感染者との性的接触によって感染する場合があります。
赤痢アメーバの症状
アメーバ赤痢にかかると、以下のような症状が現れることがあります。
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下痢や腹痛
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血便や粘液を含んだ便
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発熱
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倦怠感や体力低下
基本的に感染しても症状が出ない場合もあり、
その場合でも感染源として他の人にうつしてしまう可能性があります。
全身状態は比較的安定していることが多くです。
赤痢アメーバの診断
赤痢アメーバを疑った場合の診断には、便の検査が一般的です。
糞便検査で原虫(嚢子もしくは栄養体)が検出されれば確定診断ができ、顕微鏡で確認します。
ただ、血便や下痢に対して赤痢アメーバをすべての方に検査することはほとんどありません。
内視鏡検査
赤痢アメ−バによる大腸潰瘍はアフタ様といわれ、潰瘍周囲は浮腫状に盛り上がり、
潰瘍底にはクリ−ム状の白苔が付着する所見です。
潰瘍病変の間の粘膜は正常であり、これらの所見はアメ−バ病変にかなり特徴的とされています。
確定の診断は、内視鏡検査の際に組織を採取し、栄養体が認められば診断ができます。
赤痢アメーバの治療
赤痢アメーバは、抗生物質や抗寄生虫薬を使って治療します。
早期に適切な治療を受ければ、ほとんどのケースで完治が期待できます。
治療が遅れると、アメーバが腸を傷つけ、重症化することもありますので、早めの受診が大切です。
赤痢アメーバの予防
赤痢アメーバの予防には、以下のポイントに注意することが大切です
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汚染された食べ物や水を避ける(特に生水や生野菜は要注意)
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手洗いを徹底する
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安全な飲み水を確保する
旅行や滞在先での衛生管理が特に重要です。
日本国内では感染のリスクは低いですが、海外旅行などで感染することもあるため、注意が必要です。
赤痢アメーバは適切な治療で回復が期待できる病気ですが、予防が最も重要です。
体調に不安がある場合は、早めに医師に相談しましょう。
院長 中谷行宏
私は消化器病専門医、内視鏡専門医としておなかの症状がある方の診療を行っています。
月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。