甲状腺 バセドウ病

甲状腺とは

甲状腺

甲状腺は気管を取り囲む蝶のような形のような小さな臓器で、重さは10~20g程度です。甲状腺は海藻などに含まれるヨウ素を元にして甲状腺ホルモンを血液中に分泌します。甲状腺疾患の頻度は高く、10人に1人は甲状腺疾患をもっていると言われています。
甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺癌など見逃してはいけない甲状腺疾患に限っても甲状腺疾患は70-100人に1人程度とされています。甲状腺疾患は、女性に多い傾向がありますが、男性もなることがあります。触ってわかりやすい人もおりますが、つばをのみこんでもらってはじめて甲状腺がわかる方もおられます。

甲状腺疾患の症状

甲状腺ホルモン不足による症状

太りやすい、疲れやすい、すぐむくむ、便秘しやすい、冷え、物忘れなどの症状がみられます。

甲状腺ホルモン過剰による症状

痩せ、動悸、手が震える、イライラする、落ち着かない、暑がり、汗の量が増えたなどの症状がみられます
必ずしも典型的な症状がでるわけではありません。立ちくらみ、下痢、だるいなどただの体調不良や、他の疾患でもみられるような症状のときもあります。

甲状腺の腫れ

健診で指摘された、知人に指摘されて気になった。このような経過経過で受診される方もおられます。左右どちらも腫れている(びまん性)あるいは一部だけ(結節性)腫れている場合があり、可能性がある病気が違います。

びまん性甲状腺腫大:バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、未文化がんなど
結節性甲状腺腫:腺腫様甲状腺腫、嚢胞、濾胞腺腫、機能性甲状腺腫、甲状腺がんなど

のどがつかえる、のどの違和感について

のどの違和感のどにものがつかえる感じや違和感などの症状から甲状腺の病気を気にされ、受診される方がおられます。身体の正面から甲状腺、次に硬い気管があり、その後ろに食道が位置しております。
甲状腺によって食道、のどが圧迫されることはほぼなく、のどの症状が甲状腺の病気が原因であることはほとんどありません。

主な甲状腺疾患

甲状腺機能異常による疾患と、甲状腺にしこりができる疾患に分けられます。

甲状腺機能異常による疾患

甲状腺機能亢進症:バセドウ病無痛性甲状腺炎亜急性甲状腺炎 など
甲状腺機能低下症:橋本病(慢性甲状腺炎)、手術後甲状腺機能低下症 など

甲状腺機能亢進症の症状

  • 頻脈、体重減少、手のふるえ、発汗(甲状腺中毒症の症状)
  • 甲状腺が左右ともにはれている
  • 眼球突出、複視

などの症状がみられます。

甲状腺機能亢進症の主な疾患

バセドウ病

自己免疫疾患の一つで、特殊な抗体によって甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモン過剰になる病気です。甲状腺機能亢進症の約80%を占める主な原因です。女性の頻度が高く疾患です。
ホルモン過剰による多彩な症状を起こします。

診断

上記のような症状と、血液検査で甲状腺ホルモン(FT3,FT4)の過剰と甲状腺刺激ホルモンの低下、抗TSHレセプター抗体(TRAb)または、甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性で診断を行います。
超音波検査では、甲状腺腫大や血流増加が特徴的な所見です。

治療

バセドウ病の治療には、内服薬、アイソトープ(放射性ヨウ素)、手術があります。症状、年齢、妊娠、出産などによって適した治療法を相談させていただきます。抗甲状腺薬という甲状腺のホルモン合成を抑える内服とヨード剤の投与を行う場合が多いです。
また、動悸などの交感神経の活動を抑えるβ遮断薬によってホルモン過剰の症状を抑える場合もあります。安定すれば症状は抑えられます。治療薬を中止できる場合もあります。
ただし、再発することもあり、慎重な経過観察が必要です。内服薬にてコントロールが難しい場合は、手術やアイソトープ治療を行う場合があります。
なお、抗甲状腺薬を急にやめると、甲状腺クリーゼという命にかかわる場合があり、内服薬の急な中止はやめてください。

 

亜急性甲状腺炎

かぜのような症状からしばらくして、甲状腺のまわりに痛みがでてきます。押しても痛みがあり、高熱がでることもあります。甲状腺ホルモンが過剰になり、倦怠感や動悸、手の震えなども起こします。ただし、甲状腺ホルモン過剰はいずれ自然に治まります。
炎症による熱や痛みには鎮痛剤を処方し、炎症が強い場合はステロイドの内服も検討します。また動悸が強い場合には、β遮断薬を用います。甲状腺ホルモンの分泌過剰から、甲状腺ホルモンの分泌低下になる場合もあるため、慎重に経過を観察が必要です。

 

無痛性甲状腺炎

典型的には橋本病の甲状腺のろ胞が一時的に破壊されることによって、甲状腺ホルモンが血中に放出されます。甲状腺には痛みがないことが特徴で、無痛性甲状腺炎と呼ばれています。
ほとんどの場合は1~2ヶ月で正常化して症状も消えます。動悸が強い場合には、β遮断薬などによる対症療法が必要です。

 

甲状腺機能低下症の症状

  • 無気力、疲れやすい、寒がり
  • 体重増加、動作や反応が鈍い
  • 動作・反応が鈍い、疲れやすい
  • 記憶力の低下、便秘

などの症状がみられます。

橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺機能低下症の代表的な病気であり、圧倒的に女性の発症が多いです。
首に触れると甲状腺の表面がゴツゴツして硬く腫れているように感じます。自己免疫による甲状腺の慢性の炎症です。

診断

上記のような症状と、血液検査で甲状腺ホルモンの低下と橋本病に特徴的な抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体がみられます。甲状腺の超音波検査で内部エコーの低下、不均一な甲状腺がみられます。上記のような所見から橋本病と診断します。甲状腺機能低下症の最も多い原因です。

治療

不足している甲状腺ホルモンを内服する治療を行います。甲状腺機能に異常がなければ治療の必要はありません。将来的に甲状腺機能低下症になる可能性はあり、半年から1年に一度の間隔で経過観察を行います。

甲状腺にしこりができる疾患(甲状腺腫瘍)

良性腫瘍と悪性腫瘍の場合があります。

甲状腺良性腫瘍:腺腫様甲状腺腫、嚢胞、腺腫など
甲状腺悪性腫瘍:甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、悪性リンパ腫などが

甲状腺の腫瘍は、適切な治療によって治せる場合がほとんどで、悪性腫瘍の場合も他のがんと比べておとなしいタイプが多いです。

妊娠と甲状腺

甲状腺疾患は女性に多い傾向があり、年齢的に妊娠や出産にも大きく関わります。
当院では、妊娠されている方、または妊娠をお考えの方の甲状腺疾患の診察・治療も行っています。

バセドウ病の治療と妊娠

適切な治療を受けていない場合、バセドウ病によって流産や早産のリスクが上昇します。妊娠した場合、妊娠中期以降にバセドウ病の状態が改善する傾向があります。
妊娠中の方や妊娠をお考えの方には、事前に内服薬の選択、処方調整が必要です。すでに適切な治療を受け、抗甲状腺薬を内服し、コントロールされている状態での妊娠には問題はありません。

当院の甲状腺治療

診療

甲状腺疾患に関して専門的な診療を行っています。甲状腺の状態を精密に観察できる超音波検査機器を導入して、経験豊富な医師が検査を行っています。
大学病院などとも密に連携しており、組織検査や手術などの治療が検討される場合にはご紹介させていただく場合があります。甲状腺の疾患は、生活の質を大きく下げる症状が多く、心臓などにも大きな負担をかけてしまう可能性があります。
甲状腺疾患では「体調がすぐれない」といった曖昧な症状が起こる場合あります。気になる症状がありましたら、気軽にご相談ください。

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